#WELL-BEING 2023.05.30
歩く、話す、見つける、
とっておきの街歩き。
SANPO TALK -横浜 みなとみらい・水野ますみ編(アシックスキッズ銀座 店長)-
※2023年4月時点の取材内容で構成しています。
その街をよく知るナビゲーターがおすすめの散歩コースを紹介しながら、自身のウォーキングスタイルについて語る連載企画「SANPO TALK」。第8回は、アシックスキッズ銀座で店長を務める水野ますみが、横浜みなとみらいの散歩をナビゲートします。鎌倉在住の彼女にとって、横浜は食事やショッピングでよく訪れる場所。でも、みなとみらい周辺を歩くのは久しぶりなのだとか。古くから変わらないものと、新しく生まれ変わったものが自然と共存する、このエリアならではの散策を楽しんでみましょう。
第8回目のSANPO TALKは、横浜高速鉄道みなとみらい線、元町・中華街駅からスタート。東京からのアクセスもよく、中華街、海、遊園地、古い建物が並ぶ街並みなど、このエリアは見どころがたくさん。平日ですが、駅前の通りも人があふれて大にぎわいです。
今回の散歩コースをナビゲートしてくれるのは、アシックスキッズ銀座店長の水野ますみ。2014年から4年間は、アシックスウォーキング ヨドバシ横浜に勤務。今も鎌倉に住んでいるため、横浜に来る機会は多いのだとか。早速、元町・中華街駅の1番出口から、中華街を背に海を目指して歩きはじめます。
「最初に向かうのは山下公園です。普段は横浜といっても関内や桜木町で食事やショッピングをすることがほとんどなので、実は山下公園は久しぶりなんですよ」
駅から5分ほど歩くと山下公園に到着。開園は1930年で、関東大震災のがれきで海を埋め立てて作られました。停泊する大型船や横浜ベイブリッジなど、抜群の眺望で人気のスポットです。
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「山下公園というと、横浜を代表する観光地というイメージ。私も横浜が職場になる前から、観光でよく訪れていました。当時は友達と中華街でご飯を食べたあとに、山下公園までお散歩するというのが定番コース。景色がいいし、風も気持ちがいいし、歩くには最高の場所ですよね」
この日も学生、カップル、家族連れと園内にはたくさんの人。遠くに見える水平線、時折響く汽笛の音。海の香りを運んでくる潮風。天気のいい日の山下公園は、のんびりとしたひとときを過ごすのには最高の場所です。
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「次のスポットもこの公園内にあるんです」と案内してくれたのは、今年4月にオープンしたばかりの「THE WHARF HOUSE YAMASHITA KOEN(ザ・ワーフハウス 山下公園)」。レストランやBBQテラスを備えてリニューアルした、山下公園のレストハウスです。
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「たまたま聞いていたラジオでここが紹介されていて、ずっと来てみたかったんです。最も気になっていたのはレストランでいただける横浜のクラフトビールなんですが(笑)、今日はお酒は我慢して、足湯に入ってみようと思います」
THE WHARF HOUSE YAMASHITA KOENの目玉のひとつが、海に面したスペースに作られた足湯テラス。11時~17時は無料、17時以降は300円で楽しむことができます。施設内の発券機から受付を済ませて、いざ入湯。
「海を眺めながら足湯に浸かれるなんて贅沢ですよね。素足ならではの解放感があって、すごく気持ちがいいです。きっと夜景もきれいでしょうし、横浜散策の締めくくりにもぴったりかもしれません」
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山下公園の最新スポットでリフレッシュしたところで、散歩を再開。ここで一旦海沿いから離れて、馬車道方面を目指します。
にぎやかな山下公園や中華街から少し離れ、これまた横浜らしいレトロな風情が残る街路を進みます。ここで、普段はどのように散歩を楽しんでいるのか聞いてみました。
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「歩くのは大好きなんですが、『よし、今日は散歩をしよう』と思って歩くことはほとんどないですね。私の場合は、目的の場所に行くときに、『ひと駅手前から歩いてみよう』とか『普段と違うルートでアクセスしてみよう』といったことをふと思いついて、気分やノリに任せて歩き出すことが多いんです」
スポーツ経験がほとんどないという彼女。長い距離をウォーキングすることもめったにないそう。
「でも、友達と歩いていたらいつの間にか夢中になって『どうしよう、こんなところまで歩いて来ちゃった!』となることはよくあります(笑)。歩いているときって、不思議と人との会話が弾む気がして。コミュニケーションが豊かになるというのも、歩くことの魅力のひとつかもしれませんね」
そんな彼女の言葉どおりに会話を弾ませながら歩いていると、次の目的地である「馬車道十番館」に到着しました。ここは明治時代の建築様式を再現して、1970年にオープンした建物。その1階が喫茶室となっています。
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「素敵なお店ですよね。普段あまり喫茶店には行かないんですが、ここにはずっと来てみたかったんです」
店内に入ると、目の前にはアーチ状のステンドグラスと開放的な吹き抜けが。コーヒーを楽しんでいるうちに、明治時代にタイムスリップしてしまいそうな空間です。水野は窓際の席に座り、メニューをゆっくりと眺めます。
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「名物のショートケーキも気になりますが……フルーツがのっている十番館プディング ロワイヤルにしようかな。それと十番館オリジナルブレンドコーヒーをください」
十番館プディング ロワイヤルは、十番館の外観のレンガをイメージしたプリンに、フルーツとアイスクリームを添えた一品。オリジナルブレンドコーヒーはホイップクリーム付きで、ウインナーコーヒーとしていただくこともできます。
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「プリンもすごくおいしいし、コーヒーも目の前で注いでくれて、他のカフェにない雰囲気を味わえました。お客さんは地元の大人な方々が多いのかなと思ってたんですが、若い女性も多いですね。横浜に来たらまたぜひ立ち寄りたいです」
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みなとみらい散歩もそろそろ終盤。横浜港方面へ戻りながらの話題は、彼女の仕事について。実は、アシックスで販売員をする前は専業主婦だったそう。現在の仕事にどんなやりがいを感じているのでしょう?
「リテールの仕事は目の前にお客様がいらっしゃるので、リアクションがダイレクトに伝わるのが面白いですね。お客様が喜んでくれるのか、満足していただけるのかは接客次第。そこがこの仕事の醍醐味だと思います」
現在はキッズシューズの販売を担当。大人向けのシューズの販売とは違った難しさもあるのだとか。
「実際に靴を履くのはお子さん。でも購入するのは親御さんです。だから接客では常に、お子さんと親御さんの二方向に意識を向けていないといけません。また私たちが実際に履いて試すことができない分、商品の魅力や特徴をしっかり言語化して親御さんにお伝えする必要があります。その点では、私自身が持っている主婦としての目線や経験が生きているかもしれないですね」
馬車道から歩くことおよそ10分。最後の目的地、「横浜ハンマーヘッド」に到着しました。ここは2019年にオープンした商業施設。名称の由来は、施設が建つ埠頭の突端にある湾港荷役用の「ハンマーヘッドクレーン」から。このハンマーヘッドクレーンは、1914年に整備され、1970年代に稼働を終えたあとも、横浜の新港ふ頭のシンボルとして現存し続けています。
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新港ふ頭客船ターミナルも兼ねるこの施設の中で、水野が案内してくれたのは、チョコレートショップの「VANILLABEANS THE ROASTERY(バニラビーンズ・ザ・ロースタリー)」。ここではカカオ豆の加工からチョコレートになるまでのすべての作業を、店内の工房で行っています。
「今は休業中なのですが、私が住んでいる鎌倉にもVANILLABEANSの店舗があって、よく訪れていたんです。元々横浜が発祥のお店でもあるので、せっかくなら今日の散歩の最後に立ち寄ってみようかなと」
夕方になり、外は少し涼しくなってきました。彼女がオーダーしたのはホットのバニラビーンズ ショコラッテ。自家製のビターチョコレートとミルクを合わせたチョコレートドリンクです。
「ほどよい甘さとほろ苦さがクセになりますね。なめらかな口あたりも大好きなんです」
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横浜で過ごした一日の締めくくりは、やっぱり海で。ドリンクを片手に日が傾きはじめた横浜港を眺めつつ、今回のSANPO TALKは終了です。
「かつて勤務していたエリアですし、鎌倉からも遠くない。でも、あらためて歩いてみると、私が知らなかった横浜をたくさん発見できました。みなとみらい周辺はまだまだ未開拓のお店やスポットも多いので、近々また歩きに来たいと思います」
昔からそこにあって変わらないもの。常に進化を止めず、移り変わっていくもの。それらが何の違和感なく、心地よく共存する。そんな横浜みなとみらいの魅力に、みなさんも触れに来てみてはいかがですか。
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山下公園
住所:神奈川県横浜市中区山下町279
電話:045-671-3648
THE WHARF HOUSE YAMASHITA KOEN
住所:神奈川県横浜市中区山下町279
電話:045-228-7737
馬車道十番館
住所:神奈川県横浜市中区常盤町5‒67
電話:045‒651‒2621
VANILLABEANS THE ROASTERY
住所:神奈川県横浜市中区新港2-14-1 横浜ハンマーヘッド2F
電話:045-323-9007
PROFILE
2014年にアシックスグループに入社し、以来リテールを担当。アシックスウォーキング ヨドバシ横浜(現在は閉店)で副店長、2018年からはアシックス初の子ども靴専門旗艦店であるアシックスキッズ銀座の店長を務めている。
Edit+Text : Taro Takayama(Harmonics inc.)