人は日々、歩く。でも、歩くときに「正しい歩き方」を意識している人はどれくらいいるでしょうか。ほとんどの人が自分の歩き方がどのようなものか、知らないはず。大事なのは、姿勢と足の運び方。まず、それだけでも意識をすると歩き方はぐんと美しく、さまになります。そう教えてくれたのは、トップモデルのウォーキング指導をはじめ、これまで2万人を超える人の“歩き方”を指導してきた豊川月乃さん。今回、豊川さんにすぐにできるウォーキングメソッドを教えていただきます。姿勢の基本、下半身の動かし方を知るだけで“歩き方”が変わり、気持ちもグッとポジティブに!
豊川さんに教えてもらう、知っておきたいウォーキングの基本。
今回はとても簡単に4つのステップで紹介します。
ステップ1:壁を使って、正しい姿勢を作る。
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「たくさん歩くと膝が痛くなる、腰痛が出るなどという場合、“正しい姿勢を作る”という歩き出す前にしておくべき、基本のフォームが意識できていないことがほとんどです。健康的に歩くためには、まず正しい姿勢の位置を知ること。今の人たちは、パソコンを使ったデスクワークや、スマホの使用から首が前に倒れてしまう猫背の姿勢になりがちです。まずは、今の自分の姿勢がどうなっているのか、家の壁を使って確認してみましょう」
〈正しい姿勢のチェック方法〉
まず、壁に沿うように背をつけて立ってみる。その状態で体の位置をチェック。
チェックポイント
1. 頭、肩、腰(お尻)、かかとは壁にぴったりついているか。
2. 背中の隙間は手のひらがぎりぎり入るくらいがベスト。
「前に落ちてしまいがちな頭の位置は、耳の位置が肩の真上にくるように意識するようにしてみましょう。頭の重さは体重の約10%と言われ、50kgの人で5kgほどの重さ。ボウリングの球を首の上に乗せているようなものです。いい姿勢を意識するには背骨の上にきちんと頭を乗せるイメージをもつことが大事です。前に落ちている姿勢が癖になってしまっていると、頭痛や肩こりになりやすくなってしまいます。頭の位置が起き上がれば、胸が開き肺もしっかり広がって深い深呼吸ができる。お腹やお尻も引き上げてみましょう。腹筋を上に引き上げるイメージをもつといいですよ。この時、背中の隙間が開きすぎている方は反り腰の可能性が高いです。握りこぶしがすっぽり入ってしまう方などは背中まわりのストレッチをする、腹筋をつくる筋トレをするなどケアをすることをおすすめします」
ステップ2:歩くときはかかとからしっかり着地する。
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「壁を使って正しい姿勢を意識できたら、そのまま壁がついてきている気持ちで美しい姿勢をキープしたまま歩き出しましょう。歩くときに意識してほしいのは“着地はかかとから”です。多くの方が、普段の生活の中では重心移動をせずに足裏全体でぺたぺたと歩くペンギン歩きをしてしまいがち。この歩き方だと足首を使わないため、足首が弱くなり、結果、足のトラブルや体全体の歪みを生んでしまう原因になっています」
〈歩き方のポイント〉
1. 膝は伸ばしたまま、かかとからすっと着地する。
2. そのまま足裏を地面にローリングさせ、つま先で地面を踏み込む。
「ポイントは、膝をきちんと伸ばせているかどうか。ぜひ試してみていただきたいですが、歩き出すときに膝を伸ばした状態だと、自然と地面にかかとから着地することになると思います。この歩き方を意識してできるようになれば、膝に不要な衝撃を与えずに済みます。先ほど言ったぺたぺた歩きは、足首や膝に負担をかけてしまう歩き方なんです。転んだり、つまずきやすかったりというのも、歩き方が原因ということも多いです」
ステップ3:腰から歩く。
OK例
腰から歩いているイメージ。膝が伸びることで、姿勢も正しくなり視線もあがる。
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NG例
足裏全体で着地をすると膝が曲がり、視線もさがりがちに。
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「ステップ2で、膝をまっすぐにすることで膝に受けてしまいがちな着地の時の衝撃は、骨盤で受けとめることができます。ぺたぺた歩きをはじめ、歩くときに膝下だけを使ってこぢんまりと歩いている人が多いと思いますが、歩くときは腰から歩く、が基本です。ステップ2で“ひざを伸ばすことがポイント”と言いましたが、これは股関節から足を前に出すように動かせば自然とできるようになると思います」
〈歩き方のポイント〉
1. 胸の下(みぞおちの下、胃のあたり)から足があるようなイメージをする。
2. そのイメージのまま股関節から足を前に出す。
「腰の位置は、意識するだけで歩く姿勢が変わると思います。それだけで歩き方が美しく颯爽とみえますし、若々しい歩き方ができるはず。腰をしっかり動かすので体幹を使い、足だけでなく体全体の使い方が変わってくると思います」
ステップ4:口角をあげて歩く。
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「歩き方と顔の表情は関係ないと思われるかもしれませんが、気持ちよくウォーキングをするためには、とても大切で必要な要素のひとつ。歩くときには、口角をあげて前を向いて歩きましょう。たとえ落ち込んでいても、とりあえず口角をあげるように意識していると自然と気分もあがってくるものです」
〈表情のポイント〉
1. 口角をしっかりあげる。
2. 気持ちをあげることも意識してみる。
「顔も表情筋という筋肉でできていますから、口角をあげることは筋トレのひとつでもあるんです。ほうっておくと筋力が衰えて口角は自然と下がっていきます。口角をあげるクセをつけていると、ほうれい線も薄くなるし、笑顔が素敵にキープできる。ウォーキングするときは姿勢を正して口角をあげる、それがセットでできるようになっているといいと思います」
豊川さんに教えていただいた、キレイに歩くための4つのステップ。何も用意せずとも、今すぐにも試すことができるものばかり。早速、今日から歩き方を変えてみましょう!
「最初はぎこちないと思うかもしれませんが、通勤の途中やお散歩の間だけなど日常的に意識して歩いてみてください。ベビーカーやスーパーのカートなど、押すものがあるとスイスイと歩きやすいので、お子さんとの散歩の時間、スーパーでの買い物の時間は歩き方を美しく意識する、とマイルールを作ってもよいかもしれません。それを2、3カ月ほど続けていると、腰痛持ちが解消されたとか、生理痛が軽くなるだとか、体にいい反応が自分でも自覚できるのではないかと思います。歩き方が変われば、血の流れもよくなるし、美しい姿勢を保つことで見た目にも変化がでる。そういう気持ちよさを多くの方に体感していただきたいです」
また、歩くときにはシューズ選びも大切、と豊川さん。
「ステップ2でお話ししたとおり、正しい歩き方では、かかとから着地することがとても大切です。そのためには、かかとがパカパカとしたスリッポンタイプのシューズやサンダルなどは不向き。しっかりかかとをホールドしてくれるシューズを選びたいです。私も仕事でヒールを履きますし、おしゃれでサンダルを楽しむこともあります。だから毎日、必ず歩きやすい靴にしましょう、とは言いません。せめて週の半分は、足にあったシューズを履いて、しっかり歩く習慣づくりをしてみてはいかがでしょうか」
Interview & Text : Kana Umehara
PROFILE
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とよかわ・つきの/モデル・美容作家・ライフコーチ・TUKINO WALK代表。
有名女優・トップモデルから、小学生や70代の女性まで、のべ2万人の女性を指導した実績を持つ。 さまざまな職業を経て専業主婦になるも、 30歳でモデルにカムバックし、 雑誌やCM、TVやラジオなど幅広く活動を広げ、36歳で「東京コレクション」に出演。 2018年にはParisのUNESCO本部にて各国親善大使の前で美japonのコレクションに出演した。日本舞踊歴10年以上。 現在は「美のエキスパート」として各種メディアで活躍中。著書に 「美人養成専門学校48の教え」(サンマーク) 「ますますキレイになる人 どんどんブサイクになる人」(大和書房) などがある。