人が快適に「歩く」ためのシューズをビジネス、フォーマル、カジュアルなどのシーン別に提案しているASICS WALKING。そんな靴選びのプロフェッショナルが靴にまつわるノウハウをレクチャーする「SHOES MASTER’S VOICE」。第6回目は「革靴の美しさのキープ術」です。靴やバッグなどのレザー用品は、履く人の使い方に合わせて形や風合いが経年変化していくもの。革靴の履き心地と見た目の美しさを維持するためには、2つのアイテムが欠かせません。
履きやすさと美しさのために、シューキーパーを使おう
革靴は履き込む度にやわらかくなり、その人の足に馴染んでいきます。しかし、雑に履いていると足の甲の部分や履き口などが変形し、歩きやすさだけでなくプロダクトとしての美しさも損なわれてしまいます。履きやすさと美しさはどうすればキープできるの? その答えはシューキーパーを使うことで解決されます。
上述した革の特性を言い換えると、革は濡れると伸びて、乾くと縮みます。足の汗(水分)を革靴が吸収することでやわらかくなり伸びていく。やがて、革は乾燥すると縮むため、履き終わった靴を放置しておくと、靴の形が変形してしまう。これが型崩れの原因となるというわけです。
そこで使っていただきたいのがシューキーパー。靴の中に入れておけば、愛用している靴の型に合わせてシワを伸ばすことができるだけでなく、アッパーの反りもまっすぐに直せるので、靴本来の美しいフォルムをキープすることができます。
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シューキーパーは大きく分けると2種類の素材が存在します。価格が安い樹脂製はエントリーモデルとして手に取りやすく、写真の木製は樹脂製と比べると高額ですが、革靴に適しています。
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なぜ木製のシューキーパーが革靴向きなのか。木は吸湿性に優れているため、靴の中の湿気を取り除く効果があります。また素材によっては消臭効果も備えているので、普段使いの革靴の型崩れだけでなく、しばらくお休みする革靴の長期保管にも向いているのです。
シューキーパーのスムーズな入れ方
シューキーパーの存在は、店頭にディスプレイされた革靴に入った状態でしか見たことがない、という人も多いのでは? そんなビギナーの方のために、シューキーパーを上手に入れるためのコツをお伝えします。
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まずは靴ひもを締めた状態の革靴にシューキーパーを入れようとしても入りません。かならず靴ひもを十分に緩めてください。強引に突っ込むのは、革が痛むだけでなく型も崩れてしまうのでNGです。ポイントは写真のように少しシューキーパーを斜めにして入れること。ゆっくり押し込みながら、角度をまっすぐに整えていきましょう。
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シューキーパーをセットした革靴は、全体の型が整ってシワが伸びた状態に。木製のシューキーパーは樹脂製と比べて高級感があり、革靴本来の美しさが引き立ちます。
かかとのフォルムを崩さないために、靴べらを使おう
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最後にご紹介するのはかかとの形を潰さないための必需品、靴べらです。さまざまな長さと素材のものがありますが、どんな靴べらでも機能自体は変わりません。今回は自宅だけでなく外出先でも使っていただくために、携帯できるコンパクトな靴べらを使います。
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靴べらのお悩みで多いのは、「靴に足を滑らせながら、どのタイミングで靴べらを抜けばいいの?」という声です。靴べらを上手に使えないと、かかとが変形して、繰り返していくうちに潰れてしまいます。靴べらもシューキーパーと同じくスムーズに使うためのコツがあるんですよ。ポイントは、足を通し切ると同時に靴べらを抜くことです。このタイミングを意識することで、かかとの形状をキープしていくことができます。
一足の革靴を長く使っていくために日々のシューケアは欠かせません。クリームやブラシなどで手入れしている愛用の革靴だからこそ、フォルムの美しさにもこだわっていきたいもの。革製品を使い込んでいくことを「経年変化」と表現しますが、どうか劣化しませんように。これまでの記事でご紹介してきたケア用品と同じように、シューキーパーと靴べらはできればではなく、かならず使っていただけると嬉しいです。次回はセレモニーが続くシーズンに合わせて、「シーン別靴選び – 入社式&冠婚葬祭 –」をお届けします。
PROFILE
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アシックスウォーキング 東京ヤエチカ 店長
2012年、アシックスジャパン株式会社に入社。以来、アシックスウォーキングでリテールを担当。地元である横浜を皮切りに店舗スタッフとして、アシックスウォーキング 横浜、鶴見、自由が丘に勤務。店長として、アシックスウォーキング 蒲田、自由が丘、渋谷を歴任し、現在はアシックスウォーキング東京ヤエチカの店長を務めている。
Edit+Text : Shota Kato(OVER THE MOUNTAIN)