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歩く、話す、見つける、
とっておきの街歩き。
SANPO TALK
#33 海と夜景と思い出をバックに、
みなとみらいで夜散歩。

#WELL-BEING 2025.09.17

歩く、話す、見つける、
とっておきの街歩き。
SANPO TALK -横浜・前川友希子編-

※2025年7月時点の取材内容で構成しています。

その街をよく知るナビゲーターがおすすめの散歩コースを紹介しながら、自身のウォーキングスタイルについて語る連載企画「SANPO TALK」。第33回のナビゲーターは、大手代理店でメディアプランナーとして働く前川友希子さん。夜散歩が好きだという彼女が向かったのは横浜のみなとみらい。絶景の海や高層ビルをバックに夜のウォーターフロントを散策するうち、ふと懐かしい思い出がよみがえってきたようで——。

今回の散歩の舞台は、横浜市中区から西区にかけて広がるみなとみらい周辺。1980年代以降の再開発によって急速に発展し、数多くの高層建築や商業施設、ミュージアム、公園などが整備されたこのエリアは、今や東京近郊の一大観光地になっています。

そんなみなとみらいを歩くのは、大手代理店に勤める前川友希子さん。毎年赤レンガ倉庫で開催されている音楽フェスに通うなど、年に数回は横浜を訪れているそうですが、この日は夜景が楽しめる時間帯を狙って散策してみることに。

「気になるコーヒースタンドがあったので、歩きはじめる前にアイスコーヒーを買っていきましょう」

みなとみらい駅からすぐの「minato coffee(ミナトコーヒー)」は、横浜ランドマークタワーやパシフィコ横浜に向かう人が行き来するペデストリアンデッキに佇むコーヒースタンド。こだわりのスペシャルティコーヒーを丁寧なハンドドリップで提供してくれるテイクアウト専門のお店です。

数ある豆の中から前川さんがオーダーしたのは、エチオピアとコスタリカをブレンドしたコーヒー。
「実際に豆の香りをかがせてもらって選びました。自分の好みやその日の気分でいろいろなコーヒーが味わえるのがいいですね」

みなとみらいといえば海の景色。おいしいコーヒーを片手に、眺めのよさそうなスポットを求めて歩きはじめました。

海からの涼しい風に誘われるように進んでいくと、そこには大きな公園が。「臨港パーク」は埋め立て事業によって作られた、みなとみらいで最大の緑地面積を誇るという公園。横浜港を一望できるビュースポットで、地元の人たちの憩いの場にもなっています。

静かに揺れる水面や横浜ベイブリッジを望みながら、「海を眺めるだけじゃなく、海を眺めている人を見るのも好きなんです」と前川さん。

「私と同じように癒されている人を見て共感したり、初々しい学生カップルを見て微笑ましい気持ちになったり。海を眺めていると心が開放されて、人の機微が見えやすくなる気がします」

園内を散策しているうちに、少しずつ陽が落ちてきました。とおりの街灯がつき、建物がライトアップされ、街全体が違った表情を見せはじめます。

歩くことが全く苦にならないという前川さんのお気に入りはそんな夜散歩。特に暑い季節は、夜歩くことが日々の健康維持と気分転換になっていると言います。

「友達と夕食を楽しんだあとに、そのまま歩いて帰るのが好きなんです。気持ちいい夜風を浴びながらその日の楽しかった思い出を振り返っていると、知らず知らずのうちに歩く距離が伸びてしまうんですよね」

七色に光る観覧車や街中を悠々と浮かぶロープウェイなど、都会的でありながら東京とはひと味違う景観で楽しませてくれるみなとみらいの夜。しばらく歩くと、昭和15年に架けられたという「万国橋」に到着しました。

「ここは横浜の絶景スポットとして有名みたいですよ。ほら、右手を見てください」

ランドマークタワーを中心に、これぞみなとみらいという夜景が一望できます。ドラマのロケ地としても有名で、この日はウェディングフォトを撮影しているカップルも。

「昼間に通ったことはあったのですが、夜の景色はまた格別。橋自体にもレトロな趣きがあって、横浜の今と昔を一度に体感できる場所と言えるかもしれませんね」

さて、万国橋を超えて馬車道方面へと歩いていると、前川さん自身と横浜との古いつながりを思い出した様子。

「私の母が横浜出身なので、小さい頃に私もこの辺りに来ていたと思うんです。当時はまだ、みなとみらいもここまで発展していなかったはずですが」

前川さんによると、親戚が集まって中華街で食事をしたことがあるのだそう。散歩の締めくくりは、そんな前川さんの記憶を辿るべく中華街まで足を伸ばしてみることにしました。

都会的な街並みから一転、独特の活気があふれる中華街を歩きながら、「そういえばこの辺りに、以前夫と来た中華料理店があるんです」と前川さん。案内してくれたのは、創業70年の中国料理店「徳記(とっき)」です。

中華街のメインストリートから少し外れた路地にある「徳記」では、名物の豚足そばをはじめ本格的な広東料理を味わうことができます。前川さんは、前回の訪問では食べられず心残りだったという海老炒飯をオーダー。しっとりとしたご飯とプリプリの海老の食感がたまらない、徳記の人気メニューのひとつです。

「こうして中華街でご飯を食べていたら、同い年のいとことの他愛もない会話や、叔父さんが面白い話で場を盛り上げてくれたことなど、当時の記憶が少しずつ蘇ってきました。たまには中華街に親戚を集めて、ひとつのテーブルを囲むのもいいかもしれませんね」

思いがけず前川さんの昔の記憶とリンクした横浜・みなとみらい散歩はこれにて終了。海、橋、公園、高層ビル、さらには中華街とさまざまな表情をもつ街並みを巡りながら、あらためて夜散歩の楽しさに気づけたようです。

「でもせっかくなので、今度はお母さんを連れて横浜を歩いてみたいですね。昔と変わらないところもあれば、大きく変わったところもあると思うので、ふたりで巡ればきっと面白さも2倍でしょう」と、家族での横浜再訪を誓う前川さんなのでした。

minato coffee
住所:神奈川県横浜市西区みなとみらい2-3-1 クイーンズタワーA 2F外
電話:045-682-5501

臨港パーク
住所:神奈川県横浜市西区みなとみらい1
電話:045-221-2155

万国橋
住所:神奈川県横浜市中区新港2-1

徳記
住所:神奈川県横浜市中区山下町166
電話:045-681-3936

PROFILE

前川友希子(まえかわゆきこ)
1987年、東京都生まれ。父の仕事の都合で小学生時代は香港での生活を経験。大学卒業後は、大手広告代理店やスタートアップでキャリアを重ね、2025年3月から現在の広告代理店でさまざまな企業のメディアプランニングに携わっている。趣味は夫婦揃って音楽だそうで、今年のフジロックフェスティバルに3日間参戦。「そのために夫がクルマをキャンピングカーに乗り換えたんです。驚きましたが、おかげで快適にフェスを満喫できました(笑)」
Photo : Sogen Takahashi
Edit+Text : Taro Takayama(Harmonics inc.)